雪の季節の絵本たち ー絵本の小径からー

ふと空気の中に、今からやってくるよ・・・という気配がした。
窓のそとを見ると、ちらほらと雪が舞い降りてきた。
窓を開けると、つんとした冷たい空気、そしてほぉ~っと白い息。
部屋の中では、ほんのり甘いココアの匂い。

 

この記事は昔作った「風のなかー絵本の小径ー」というタイトルのHPに載せていたものです。生協のインターネット事業からの撤退に伴い、こちらに記事を移すことにいたしました。まだムスメが幼稚園生だった頃、その当時に読んだ絵本の記録です。絵本はずっと残っていくと思っているので、少し修正と加筆を加えながら、記事を順次移しています。

(20年以上も前に書いた記事なので中には絶版になっているものもありますが、気になった本がありましたら、図書館にて探してみてくださいね。)

また、2002年以降に我が家に迎えた本も追加しています。

 

雪の気配を感じたら・・・

 

■しろいゆき あかるいゆき
 アルビン・トレッセルト・作 ロジャー・テュボアザン・絵 江國 香織・訳 BL出版 1995
 WHITE SNOW BRIGHT SNOW by Alvin Tresselt and Roger Duvoisin

 静かな夜に、雪がこっそりと降ってきそうな気配・・・。ゆうびんやさんも、おひゃくしょうさんもおもわりさんも、おまわりさんのおくさんも、どんよりとしたグレーの空を見上げながら、みんな、その気配に気づくんです。雪の匂いを感じたり、つまさきがいたいと身体がその気配を感じとったり。人だけではありません、うさぎだって雪が降るのを知っています。こどもたちは最初の雪が落ちてくるのをまっています・・・だけど、だれも見ていないときに、雪は降りはじめたのでした。みんなは、ゴムぐつをはいたり、雪かき用のシャベルをとりにいったり・・・雪の用意をしています。そして、ゆきはどんどんふってきました・・・なにもかもが雪にうずまっていきます・・・。

 トレッセルトとデュボアザンが組んで作ったはじめての絵本が「しろいゆき あかるいゆき」でした。雪が降るときの、低くたれこめた雲をあらわすかのような、全体的に少し暗いグレーが基調となっています。その色は今にも雪が降ってきそうにどんよりとした気配を私たちに伝えてくれます。それにコントラストを与えるような赤と黄色の色使いが、とても印象的です。トレッセルトの詩的で美しい文章を、江國香織さんが美しい日本語で訳されています。絵本全体が美しい詩でできているようです。冒頭の詩は、しいんとした雪の気配を感じるので、声のトーンを下げて、しずか~にささやくように読んでしまいます。。娘もこの絵本を読むと、じっと静かに聞き入っています。(2001/1/20)

BL出版のサイトで確認しましたところ、残念ながら現在は品切れのようです。図書館でお探しください。(2024.1.9)

 
 

■ゆき
 ユリ・シュルヴィッツ・作 さくま ゆみこ・訳 あすなろ書房 1998
 SNOW by Uri Shulevitz

 街中がどんよりとした色・・・そのどんよりとした空から、雪がひとひら舞い降りてきました。「ゆきがふっているよ」と男の子が言います。それに対して、大人達は「すぐにとけるわ」と冷ややかな対応。ラジオだって、テレビだって、「ゆきはふらないでしょう」っていうんです。でもね、ほら、雪はラジオの言うことだって、テレビの言うことだってききません。雪は後から後から降ってきて、街中を雪景色にかえちゃいます。「わーい、ゆきだよ!」男の子も犬もうれしそう!

 雪が降った様子がとても嬉しい男の子の気持ちがとてもよく伝わってくる読んでいて、ほほえましくなってしまう作品です。大人は雪が降り積もると、やっかいで困るんだけど、こどもはこの銀世界が最高なんだよね。男の子と一緒に踊っている中にはハンプティ・ダンプティがいたりして、シュルヴィッツさん、遊んでいます。降っていたときのどんよりと重たい空、その後、雪がやんで晴れわたった空、きらきらと輝く雪が目にまぶしい・・・。スキー場で見た銀世界を思い出します。ほおにぴしっと冷気が伝わる感触。白い雪と青い空のコントラストが、心を透明にしていく、あの雰囲気。
 娘は背表紙の大人の行列がおもしろいらしい。しげしげとながめていました。(2001/1/20)

ゆき

ゆき

Amazon

現在も出版されています。(2024.1.9)

 
 

■ふわふわふとん 
 カズコ・G・ストーン・作 福音館書店 2000

 やなぎむらシリーズの1冊、冬のお話です。大きな大きなやなぎの木のしたに、ちいさなちいさな村がありました。そのやなぎ村には、ばったのトビハネさん、かたつむりのキララさん、くものセカセカさん、そしてありのパパ。ママ。ぼうやのセッセかぞくが住んでいました。
 さて、やなぎのはもすっかり落ちて、やなぎむらにも、もうすぐ冬がやってきます。落ち葉で作った「やなぎハウス」はあたたかいのですが、風の強い日は、すきまかぜが入って少し寒いこともあります。そこで、みんなで、あたたかいおふとんを探しに出かけることにしました・・・。
 さて、みんなはどんなあたたかなおふとんを見つけたのでしょうね♪・・・小さな生き物達の一生懸命な姿がひきつけるのでしょうか・・・娘はこのやなぎむらのシリーズはどれも大好きなのでした。丁寧で優しい色鉛筆画に、(たぶん)水彩で雪が描かれ、しんしんと降り積る雪の雰囲気がとても伝わってくる1冊です。(2002/02/09)

福音館書店のサイトで確認しましたら、残念ながら品切れでした。図書館でお探しください。やなぎむらシリーズで今入手できるのは「サラダとまほうのおみせ」と「ほたるホテル」と「きんいろあらし」の3冊のようです。今は四季でそろわないのですね…「ふわふわふとん」再販されますように。(2024.1.9)

 

■チリとチリリ ゆきのひのおはなし
 どい かや/作 アリス館 2010

  「チリとチリリ」シリーズの冬のおはなしです。初雪がふりはじめた冬の午後、チリとチリリは自転車で出かけることにしました。(雪の日に自転車って、どういうこと?!と、大人は突っ込んでしまいますが、そこはとりあえず脇に置いといて、^-^;)ふたりが向かった先にはこおりのとびらがありました。中に入るとそこは…。お花のつぼみがこおってできているビー玉!なんてファンタジーな世界でしょう。一度そんなビー玉で遊んでみたいものです。雪と氷の世界なのに、なんだかあったかい感じがするのは、色鉛筆で描かれた優しい絵だからかもしれませんね。

現在も出版されています。(2024.1.9)

 


 
今日は楽しい雪遊び♪

 

■ゆきのひはあついあつい 
 いわむらかずお・作 至光社 1983

 娘が大好きな、こりすのぱろ・ぴこ・ぽろシリーズの冬のお話、森の雪景色の色合いがとても素敵な1冊です。森にゆきがつもって、こりすたちは大喜び!朝御飯がおわって、お父さんを遊びに誘いますが、お父さんは「寒いから、すとーぶのそばがいい」とつれない返事。しかたがないので、3匹だけで出かけますが、子どもたちだけではうまくそりがはこべません。そこでやっぱりお父さんを呼んでくることに・・・さて、いやがるおとうさんをやっとつれだしたこりすたち、おとうさんにひっぱってもらって、しゅ~~~っ。あれ?いつのまにか、お父さん、マフラーをぬいでいますよ・・・ふふっ♪
 この本をはじめて読んだのは、実は娘もはじめて「そり遊び」に行ってスキー場の駐車場の順番待ちをしているときでした。その後、娘も「そり遊び」を体験!・・・しゅ~~~~~つ♪・・・ああ、楽しかったよねぇ!・・・で、やっぱり親は暑かったりしました(笑)。 (2002/02/09)

現在も出版されています。(2004.1.9)

 

■14ひきのさむいふゆ
 いわむらかずお・作 童心社 1985

 いわむらかずおさんの絵本をもう一冊。こちらは14ひきのねずみシリーズです。おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、そしてきょうだい10ぴき。大家族のねずみ家族は有名なのでご存知の方も多いはず。かぜがなる、ゆきがまう、さむいふゆ。14匹のねずみたちはストーブがもえている暖かい部屋で何かを作っていますよ。のこぎり、ゴーリゴリ、はさみ、ショキショキ。ふふふ、いったい何を作っているのかな?台所ではおばあさんが何か美味しそうなものも作っています。ふかふかのおまんじゅう!とっても美味しそう。それを食べてたらみんなでとんがりぼうしゲーム!そして、雪がやんだら、今度はそり遊び! 彼らの楽しい冬の様子にほんわかします。

 ところで、とんがりぼうしゲームってとっても懐かしいボードゲームです。絵本にはいわむらかずおさんが「とんがりぼうしゲーム」のしかたを書いたピンク色の冊子を付録でつけてくださってます。(今もついているのかどうかは不明ですが)

現在も出版されています。

そうそう、この14ひきシリーズって、カバー外すと、絵が微妙に違うのです。

それもまた楽しみのひとつだったりします。

www.doshinsha.co.jpそして童心社のサイトに行きましたら、すごろく[上製版]の裏面に、

とんがりぼうしゲームがついてました。これ、私が欲しい、^-^;(2024.1.9)

 

■ウッレのスキーのたび 
 エルサ・ベスコフ・作 石井登志子・訳 フェリシモ出版 2002

 ウッレは6歳の誕生日に、父さんから新しいスキーを買ってもらいました。ウッレは雪が降るのが待ち遠しくて仕方ありません。そして、ようやく雪が降り積ると、朝御飯もそこそこに、スキーをはいて、すべっていきました。・・・と、ウッレは森の中で、頭の先から足の先まで、きらきらと白く輝くおじいさんに出会います。おじいさんは、ウッレを冬王さまのところへ行こうと誘ってくれました・・・。
 ウッレが出会う霜じいさんや、雪解けばあさん、それに冬王さま、そして春の王女さま・・・北欧の冬の楽しみと春がやってくる喜びを感じます。娘はね、ウッレがベッドででんぐりがえりをするところがお気に入りです♪・・・ふふっ。(思わず、でんぐりがえりをしちゃう嬉しい気持ち、よく、わかるよね~♪) (2002/02/09)

www.tokuma.jp私が持っているのはフェリシモ出版のものですが、その後あらたに徳間書店から「雪のおしろへいったウッレ」と改題され、表紙も変わって出ています。訳は同じ石井登志子さんです。(2024.1.9)

 

■ゆきのひ
 エズラ=ジャック=キーツ ぶん・え きじま はじめ やく 偕成社 1969
 THE SNOWY DAY  by EZRA JACK KEATS

 冬のある朝、ピーターは目を覚まし、窓の外を見ると雪が積もっていました。あさごはんを食べてから、外へ飛び出すピーター。きゅっ、きゅっ、きゅっ・・・ピーターはつまさきを外へむけて歩いたり、中へ向けて歩いたり。それから両足をゆうっくりひきずって歩いて、二本のすじをつけてみたり。それから、手に持った棒で、ちょこっと木をつっつくの・・・どしん!あらあら、ピーターの頭の上に雪がおっこちてきちゃった。てくてくてく・・・大きな子どもたちの雪合戦に入りたいけれど、小さなピーターにはまだ無理。そこで雪だるまを作ったり、天使のかたちを作ったり、雪の小山をすべり降りたりして遊びます。そうして雪遊びを満喫したピーターは雪だんごを作ります。これで明日遊ぼうと思って、ポケットにしまうんです。そして、暖かいお家の中に入ります。家ではお母さんに、ぼうけんしたことをすっかり話します。それからお風呂に入って、寝る前にポケットに手をつっこんだピーター、なんと雪だんごが消えちゃったの!かなしくって、その夜、ピーターが見た夢のなかでも雪は消えちゃうのですが・・・。

 淡いピンクやほんのりとした緑色をベースに描かれた雪の表情が、とてもやわらかな新雪の雰囲気を出しています。その新雪の中へ飛び出したピーターのしぐさひとつひとつが、いかにも幼子が雪に出会った喜びを表現していて、とても愛らしく、読み手に伝わってきます。娘はピーターのやっていることにとても共感するのか、この本を読むとニコニコしています。特に天使の形を作るところがお気に入りです。
(2001/1/16)

kaiseiweb.kaiseisha.co.jp↑偕成社の紹介ページがありましたので、貼り付けておきます。現在も出版されています。(2024.1.9)

 

■このゆきだるま だーれ?
 岸田 衿子・文 山脇 百合子・絵 福音館書店 1997

  山にちらちらと雪がふってきました。もみちゃんはそりが大好きです。彼女がそりにのろうとしていると、いろんな動物達がやってきます。そこでみんなでそりを山のうえまでひっっぱって、乗り込みます。さあ、出発しました。風を切って、そりはすべっていきます。みんなたのしそう、気持ちよさそう・・・。ところが、あらあら、りすくんが一番最初にそりからころがり落ちます・・・次々に動物達がおっこちて、気がつくと、最後 はもみちゃん一人。さて、彼女がすべりおりて来て見たら、見たことのないゆきだるまがずらり。さてさて、このゆきだるま、一体だれだかわかるかな?

 岸田衿子さんの文章がとてもリズムカル、読むだけで楽しいそり遊びをした気分になります。娘は次々に動物達がおっこちていくのがおもしろくって、けらけら笑っています。そして「だれとだれとだーれ?」と質問すると、「これがりすさん、これがうさぎさん、これがくまさん・・・」と教えてくれます。山脇さんの絵も愛らしい、小さなかわいい絵本です。(2001/1/18)

現在も出版されています。(2024.1.9)

 

■おおさむこさむ
 こいでやすこ・作 福音館書店 2005

  きつねのきっこシリーズの1冊です。きつねのきっこといたちのちいとにいはきっこのおおばあちゃんにマントをぬってもらいました。3匹は喜んで早速それをきてそり遊びに出かけようとしました。でもおおばあちゃんは、こんなゆきのひにはゆきぼうずがでるから家にいるのがいちばんと言います。でも3匹はそりあそびがしたかったのです。おおばあちゃんはしかたなしに3匹に「ゆきぼうずにあってもけっしてさむいといわないこと。さむいといったらさいご、こちこちにこおらされてしまうからね」と注意をして3匹を送り出しました。そして3匹がそり遊びをしていると、おおさむこさむというゆきだるまに出会います。そしておおさむこさむの案内でそり遊びをして、あつくなったのでかきごおりを食べていると、おおさむこさむが急に大きくなりだして…。なかなかにおおさむこさむがこわい、^-^; やっぱり年寄りの言うことはちゃんと聞くものですね。^-^;

きつねのきっこシリーズ、ほかに現在「おなべおなべにえたかな」「やまこえ のこえ かわこえて」の3冊がハードカバー出ています。(2024.1.9)

 


 
・・・吹雪にめげない・・・

 

■はたらきもののじょせつしゃけいてぃー 
 バージニア・リー・バートン・作 いしい ももこ・訳  福音館書店 1978
 KATY AND THE BIG SNOW by Virginia Lee Burton

 けいてぃーはキャタピラのついている、赤くてりっぱなトラクターです。けいてぃーには、いろんな部分品がついていて、ブルドーザー、除雪機などの部品をつけかえることができました。
 ある朝、雪がふりはじめ、どうやら大雪になりそうな気配。
けいてぃーが活躍する時がやってきました。すっかり雪に覆われたジェオポリスの町では、けいてぃーだけが動いていました。そして、警察の所長さんも、郵便局の局長も電話局の人も電力会社の人も、みんながケイティーに助けを求めています。

 けいてぃーが、みんなの要請を受けて「ちゃっちゃっちゃっ」とひたすら働く姿が、素敵です。娘はその「ちゃっちゃっちゃっ」に合わせて、けいてぃーが除雪した道を、指でたどっていきます。
 そして、最後はちょっと疲れていても、へこたれずに仕事を続けて行くけいてぃー・・・すべての仕事を終えてもどる、その後ろ姿がまた、充足感があって、読み終えた私たちも「ああ、ほっこりした」と安堵するのでした。
 この本に出会ったのは、昨冬の今頃です。その日はこれから滋賀県の朽木村へそり遊びに行こうとしていました。スキー場の駐車場待ちの間、この本を車の中で読みました。すると、スキー場の入口には、けいてぃーにそっくりな除雪車が置いてあって、娘に見せてあげることが出来たのでした。実物見るとやっぱりいいですよねぇ。(2001/02/15)

現在も出版されています。(2024.1.9)

 
 

■大雪 
 ゼリーナ・ヘンツ・文 アロワ・カリジェ・絵 生野 幸吉・訳 岩波書店 1965
 DER GROSSE SCHNEE by Selina Chonz & Alois Carigiet

 音もなく降りつもる大雪、山や牧場をうずめ、木の葉いちまい、草いっぽんも見えません。あらしの木だけがごわごわとした枝をひろげ、動物達の小さなおうちを作っていました。
 そのあらしの木にフルリーナは干し草を持ってやってきます。動物達は、フルリーナのことは知っているから、彼女がやってきても逃げ出しません。
 あしたは子どものそり大会。ウルスリは自分はそりをりんどうみたいに青く塗るからと、フルリーナをふもとの村の糸屋まで、そりを飾る毛糸のふさを買いに行かせました。フルリーナは、雪ふりなのに・・・と泣きながら出かけていきます。
 すばらしい毛糸のふさを手にした帰り道、やっとの思いで雪の中を「あらしの木」までたどりついたフルリーナ。そのとき、真っ黒な風がさあっとふいて・・・。
 一方、いっこうに帰ってこないフルリーナのことが心配なウルスリは、妹をむかえに行くことにしましたが・・・。

 スイスの山の冬、私が思い出すのはアルプスの少女ハイジです。ハイジの家の裏にも、ちょうどこのお話のように「あらしの木」がありました。大きな大きなもみの木、そのもみの木の根元は、ふところ深く、まるでお母さんにいだかれているよう。雪がどんなにふかくても、そこだけは、安全で動物達の憩いの場所になっているのでしょう、ちょうど、フルリーナを守ってくれたように。
 カリジェの絵が、スイスの子どもたちの冬の様子をたっぷりと伝えてくれます。(2001/2/14)

現在も出版されています。(どうやら2018年に「ウルスリのすず」とともに改版が出ているようです。「フルリーナと山の鳥」が品切れなのは残念です。)(2024.1.9)

 

■ゆうかんなアイリーン 
 ウィリアム・スタイグ・作 おがわ えつこ やく セーラー出版 1988
 BRAVE IRENE by William Steig

 お屋敷の奥様に頼まれたドレス、今夜のパーティーに間に合うようにお届けしなくちゃいけないのに、お母さんは熱があるようです。そこで、アイリーンは「私がとどけてあげるわ!」とお母さんをベッドに寝かせ、出発しました。さて、お屋敷に行くには牧場を通り抜けていけばいいんですが、折悪しく雪がふってきました・・・風もどんどん強くなってきて、アイリーンに唸り声をあげます。アイリーンは必死にお届けものを守りながら進んで行くのですが・・・。

 病気でたおれたお母さんにかわって、勇敢にもおつかいを果たそうとする,けなげなアイリーンの姿に目が離せません!ページをめくるごとに、一体どうなるんだろう・・・って、親の私はハラハラドキドキ、娘は・・・アイリーンと同化して吹雪の中にいるんでしょうか、息をひそめています。
 ところで、娘はあるページがとてもお気に入りなんです。なぜって、彼女は無類のドレス&お姫好きなもので・・・お気に入りの動機が不純って気もするけど、ま・・・それもよし(苦笑)。(2001/2/2)

私が持っているのはセーラー出版ですが、現在はらんか社という名前に社名変更されています。現在も出版されています。(2024.1.9)

 

■アンナと冬のすみれ 
 ネッティ・ローウェンスタイン・再話 エリザベス・ハーバー・絵 中川千尋・訳 徳間書店 2000

 スロバキア民話をもとにしたお話です。むかしむかし、あるところに、アンナという女の子がいました。12月のある日、外はこごえるほど寒く、なにもかもがふかい雪とあつい氷におおわれていましたが、アンナは、まま母のかあさんと、その連れ子のおねえさんに言われて、森にすみれの花を探しに行かされました 。上着の一枚も着ずに家を出されたアンナは、寒くてこごえそう・・・と、そのとき、アンナはたき火を見つけます。そのたき火を囲んでいたのは・・・。
エリザベス・ハーバーの描く12の月の精たち、とてもやさしく幻想的です。
 なお家には、同じ話しをもとにした「12のつきのおくりもの」(こどものとも年中向き 1989年3月発行)というのもありますが、こちらの挿し絵は、「丸木俊」さんなのでした。「こどものとも」って、すごいなぁ・・・と思った1冊です。
(2001年12月の「えほんmemo」から、こちらへ移し、少し書き加えました。)

徳間書店のサイトで確認しましたが、現在は絶版のようです。図書館でおさがしください。なお福音館書店の「12のつきのおくりもの」は1998年にもこどものとも年中向きで出ていますので、そのうちまたこどものともで出るかもしれませんね。(2024.1.9)

 

■ゆきのひのゆうびんやさん 
 こいでたん・文 こいでやすこ・絵 福音館書店 1992

 3匹のねずみシリーズのうちの1冊です。外は雪、3匹のねずみがあたたかい部屋の中で遊んでいると、ゆうびんやさんがやってきました。小包はやまむこうにすむおばあちゃんからでえりまきが3枚入っていました。ところが、ゆうびんうさぎさんは風邪をひいてふらふらしています。そこで3匹のねずみはだんろのそばにゆうびんうさぎさんを座らせると、かわりに配達にいくことにします。最初はりすさんのうち、次がたぬきの家、3番目はあなぐまやしき。そして最後はきつねのおばあさんのところ。ところがゆきとかぜがますます強くなってきて、3匹はふきとばされ、そして荷物がこわれて、中のりんごが飛び散ってしまいました。さあ、大変!さて、3匹は無事にきつねのおばあさんのところへ荷物を届けることができるのでしょうか?ハラハラドキドキ、でも最後はにっこりなお話です。

3匹のねずみシリーズは全部で4冊。「とんとんとめてくださいな」「はるです はるのおおそうじ」「とてもとてもあついひ」いずれも出版されています。(2024.1.9)

 

 


 

雪だるまのお話

 

■やさしい ゆきだるま 
 フランチェスカ・シュティッヒ・作 ヴラスタ・バランコヴァ・絵 那須田 淳・訳 ひくまの出版 2000
 Der gute Schneeman by Vlasta Barankova & Franziska Stich

 朝、パウリーナが目を覚ますと、あたり一面、雪景色が広がっていました。雪が止むと、弟のフェリックスと二人で雪だるまを作りました。それもとびっきりすばらしい雪だるま。雪だるまも集まってきた人々の注目を集めて、嬉しくて仕方ありません。
 夜になり、だれもいなくなった庭で、雪だるまは満月とお話をしていました。するとそこへ雪でお家をなくしてしまった、寒くてこごえそうなすずめがやってきました・・・。
 雪だるまは次々にやってくる動物達が窮状を訴えると、自分の帽子や鼻や髪の毛をわけてあげます・・・そうして、最後は自分にはなにもなくなってしまいます。
翌朝、のぼってきたおひさまは、そんなゆきだるまに優しい言葉をかけるのでした・・・。

 自分が人の役にたったことを喜び、そして自分がいなくなった後でも、みんなの心の中に存在する・・・というお話の根底には、キリスト教の教えを見る気がします。やはりヨーロッパの人々の心にはそういった信仰が、血となり肉となって、自分の身体の中にとけこんでいるからでしょうか。
おひさまが雪だるまに「あんしんして ゆっくりと おやすみ」という言葉が印象的です。
 バランコヴァはチェコの作家。暖色系の色使いのページは、とても優しい気持ちにさせてくれます。(2001/2/14)

出版社がなくなってしまったため、現在は出版されていません。図書館でお探しください。(2024.1.9)

 

■ゆきだるまのさがしもの
 ゲルダ・マリー・シャイドル・作  ヨゼフ・ウィルコン・絵 いずみちほこ・訳 セーラー出版 1988
 Lieber Schneemann wohin willst du?
 by GERDA MARIE SCHEIDL and JOZEF WILKON

 雪で真っ白な野原の真ん中に雪だるまがつまらなそうにたっていました。
「どこもかしこも真っ白だ。この世にはいろんな色の花っていうものがあるそうだけど、どこに行ったらあえるんだろう。」そこで、雪だるまは探しに出かけます。彼は行く先々で出会ったうさぎやカラスや猫たちに「それが花かい?」と尋ねますが、みんな「かわいそうな雪だるまくん、雪で出来ているんだから仕方がない、花には会えないよ」と言われてしまいます。「どうしてぼくは花に会えないんだろう」悲しくなった雪だるまはもうくたくた…ちょっとやすんでいこうと思います。そして、そこにあった建物のとびらに寄りかかったら、中に落ちてしまいました!気がつくと、あたりからいいにおいがしてきます。雪だるまは花にやっとめぐり会うのですが…。

 「そこでゆめはおしまいになりました」というページにどきっとするのですが、話はそこで終わりません。ちゃんとその夢の後の続きがありました。はじめて読んだとき、よほどそのシーンが強烈だったのか、娘は「どうして、雪だるまのゆめはおしまいになったの?」と、何度もしつこく聞いていました。最初の雪だるまの表情と最後の表情の変化が、印象に残ります。娘のお気に入りの絵本。ヨゼフ・ウィルコンはポーランドの代表的な絵本作家。私は「ミンケパットさんと小鳥たち」(ウルスラ・ジェナジーノ/作 ヨゼフ・ウィルコン/絵 いずみちほこ/訳 セーラー出版)という彼の初期の作品が好きです。(2001/1/17)

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どちらの本も残念ながら絶版のようですので、図書館にてお探しください。(2024.1.9)

 

↓さて、こちらは12月にアップした「Happy Christmasの絵本」からの再掲です。(2024.1.9)

■ゆきだるま The snowman
 レイモンド・ブリッグズ・作  評論社 1978
 THE SNOWMAN by Raymond Briggs

 色鉛筆画のとても優しいタッチで描かれた絵本です。我が家がはじめて「コマわり」の絵本で、しかも文字のない絵本に出会ったのは、この本が最初でした。この本が我が家にやってきたとき、もうどれだけ毎日のように、娘に読まされたことでしょう!!!(文字がないぶん、絵をひとつひとつ解説しながら読みすすむので、やたら時間がかかりました・・・笑。)
 男の子とスノーマンの幻想的で楽しい一夜は、まるでクリスマスの贈り物のようですね♪ (2001/12/8)

現在、出版されています。(2023.11)

 


 

雪の結晶に魅せられて

 

■雪の写真家 ベントレー
 ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン・作 メアリー・アゼアリアン・絵 千葉 茂樹・訳  BL出版 1999
 SNOWFLAKE BENTLEY by Jacqueline Briggs Martin and Mary Azarian

 その昔、ある農村に、ウィリーという男の子がいました。ウィリーは、なによりも雪が好きでした。ちょうやりんごの花もきれいだけれど、雪の美しさは、どんなものにもけっしてまけない。ウィリーはそう思っていました。かあさんから古い顕微鏡をもらったウィリーは、雪のふる日はいつも雪の結晶を観察していました。16歳になったある日、ウィリーは顕微鏡つきのカメラがあることを本で知り、かあさんに話をします。話を聞いたかあさんととうさんは、ウィリーの願いをかなえてあげたいと思いました・・・。

 きのうこの冬はじめての本格的な雪が降りました。しかし、水分をたくさん含んだ重たい雪。ぼたぼたっと地上に降りてきて、道路がしだいにべちゃべちゃのシャーベット状になっていきます。このあたりの雪はいつもこう。しかし、数年前の2月に降りつもったときには、めずらしくさらさらの粉雪でした。手のひらに舞い降りた雪は、まるで天使が編んだレース編みのように、ひとつひとつ雪の結晶が美しい模様を形作っています。そんな雪の結晶にベントレーが魅せられたのも、わかるような気がしました。ひとつとして同じ形をもたない雪の結晶、それもとても美しい。なのになんとはかなくその形が消えてしまうこと!
 この本は、ひたむきに雪の写真を撮り続けた「雪の写真家ベントレー」の生涯を、木のぬくもりを感じる版画で綴った伝記絵本です。ウィリーの雪への情熱、真摯に雪の結晶を追い続ける彼の姿、それを理解し、ささえ続けた両親の愛情にも心をうたれます。こうした家族の理解があってこそ、好きな道をまっすぐに彼は歩むことが出来た・・・これはすごく簡単なようで、むずかしいことなのだと思います。どうか私も、そのような気持ちを持ち続けられますように。
 ベントレーの撮った写真集「雪の結晶」、その美しい雪の結晶の写真集を、いつかこの目で見てみたいです。(2001/1/21)

現在も出版されています。

その後、ベントレーの雪の写真集は手に入れました。

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Snowflakes in Photographs  by  W.A.Bentley  Dover Publications 2000

ひとつとして同じ結晶の形がない不思議。そして雪の結晶だけでなく、最後の方には霜の写真もあります。(2024.1.9)