ねことことり

表紙には、花に囲まれて枝を持つ猫さん。

そのとても細密な絵に惹かれて、手に取った1冊です。

本を開くと、まず飛び込んでくるのは「ねことことり」と題がある見開きのページ。まるで、映画のオープニングのようなはじまりです。(風の音にまじって、三輪トラックの音も聞こえてきそう。)

山桜が咲いて、季節は春でしょうか。木々や草の匂いも感じられそうな絵です。

そして、ムーミンのおうちのような赤い屋根が見えてきました。

ねこは部屋中のまどを開けて、冷めた紅茶を飲んでいます。(猫舌ですものね)

このお部屋の絵もすごく作り込まれていました。

最初読んだ時には気づかなかった紅茶の缶や袋、2回目に手に取った時に、そうしたものも丁寧に描かれていることに気付きました。(黒い缶はマリアージュ・フレールかな?…とか、そんなちいさな発見が楽しい。)

さて、こぶしの木のこえだを束ねるのが、このねこのお仕事です。

仕事をはじめようとしていたら、ことりがやってきて、小枝をわけてくれないかと頼みにきました。しかし、これは大切な仕事の小枝です。でも小鳥は困っている様子。

そこで、ねこは一日一本なら持って行っていいよとこたえ、小鳥は毎日一本ずつ枝をもらいに、7日間通うことになりました。

こうして、ねことことりの交流が生まれるのですが、巣をつくるための7本の小枝をもらったあと、ことりはお礼を言って去っていきます。

ねこはことりとの交流が楽しかった分、その後の寂しさが身にこたえます。夜の描写はそんな孤独をいっそう感じました。

そんなある日、遠くから聞き覚えのある懐かしい歌声が聞こえてきて…。

 

絵を描いておられるなかの真実さんは水彩で細密画を描かれているそうです。

とても繊細な絵、スイカズラなどの花の絵からは本当に香りが漂ってきそうです。

原画展があれば見にいきたいなと思いました。

 

ねことことり たてのひろし/作 なかの真実/絵 世界文化社 2022